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観劇 | ||
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劇場の座席には様々な種類と呼び名があり、劇場によっても異なるようです。 |
パリのガルニエのオペラ座の場合、1階の左右にあるボックス席を「Baignoire(ベニュワール)」と呼ぶようです。
「Baignoire」に挟まれた舞台正面の1階席は平らになっていて、
「Orchestra(オーケストラ)」と呼ばれ、日本語では「平土間席」と訳すようです。 「Orchestra」の前部にはオーケストラが陣取っています。 オーケストラがいるのでその席を「Orchestra」と呼ぶのかと思っておりましたが、 実はその逆で、「Orchestra」という席の名前が先にあり、 そこに座る楽団もオーケストラと呼ぶようになったようです。 上のベローの絵にも「Baignoire」の窓の向こうに「Orchestra」が描かれています。 そして「Orchestra」には、あからさまに舞台を見ていない人も・・・ |
「Orchestra」から舞台を見るとこのようになります。
ここでも舞台とはあさっての方向にオペラグラスを向けている人がいます。 左の絵の左上にちらっと「Baignoire」が描かれているのがお分かりになりますでしょうか。 |
パリのオペラ座の場合、2階よりも上に馬蹄型に並べられたボックス席を「Loge(ロージェ)」と呼ぶようです。
2階、3階、劇場によっては4階、5階にも「Loge」があるようです。
上のカサットの2点で背景に描かれているのが「Loge」です。 絵の題名こそ「Loge」ですが、女性が座っているのは「Loge」よりも下方、「Orchestra」の後方の席です。 パリのオペラ座の場合、この席は「Balcon(バルコニー)」と呼ぶようです。 |
カサットはオペラ座の雰囲気を出すために「Loge」の構造を描くことに熱心でした。
構図の似ているルノワールの絵と比べてみると、
ルノワールが色彩を重視しているのに対し、
カサットは「Loge」の構造にこだわっていることが分かります。 |
カサットの描くオペラ座では、必ずと言って良いほど女性が日本の扇を持っています。
カサットが観劇の絵を描いたのは1878〜1882年ころですが、
最初は扇を閉じて持っている絵が多いのに対し、
次第に扇を広げている絵が多くなっていきます。
これには、奥に見える「Loge」が描く弧と手前の扇の弧とを対比させることで
空間的な奥行きを持たせる構図上の狙いがあったのではないかと思います。 また、日本の扇はカサットの日本への強い感心の現れでもありました。 |
このベローの絵はひょっとするとオペラ座ではないかも知れませんが、
舞台と「Orchestra」「Baignoire」「Loge」の位置関係がよく分かります。
「Baignoire」には例によって例のごとく変な方向を見ている人がいらっしゃいます。 |
どちらの絵も右端の手前に「Orchestra」、奥に下から順に「Baignoire」「Loge」が描かれています。 左のリハーサルの絵は、恐らく「Loge」に入って描いたものでしょう。 右の絵は舞台の袖から見たものです。 |
ドガと共に踊り子を多く描いたフォランも「Orchestra」「Baignoire」「Loge」を描いています。 ドガやベローの絵でもそうなっているのですが、舞台の前端から上向きに照明が当てられているのですね。 |
上記の「Loge」の構造を考慮してこのルノワールの絵をご覧になってください。
「Loge」から舞台を見るためには下を見下ろすはずです。
しかしこの絵の後方の男性は明らかに上を見上げています。
恐らく男性は舞台とは違うところを見ているのでしょう。 何処を見ているのか?ご想像にお任せします。 |
アンリ・ド・トゥールーズ・ロートレック画
「The Box with the Gilded Mask(黄金の仮面のある桟敷席)」1893年
エバ・ゴンザレス画
「Une Loge aux Italiens(イタリア人座の桟敷席)」1874年
ピエール・オーギュスト・ルノワール画
「The Loge(桟敷席)」1879年
ピエール・オーギュスト・ルノワール画
「Box at the Opera(オペラ座の桟敷席、または音楽会にて)」1880年
「桟敷席」とは通常は指定の貴賓席のことを指すようですが、
絵画では大抵「Loge」のことを指します。
「Loge」や「Baignoire」「Box」と題が付いていれば「桟敷席」と訳します。
そういうものだと思ってください。 |
エドガー・ドガ画
「Woman with Opera Glasses(オペラグラスを持つ女性)」
1876年
アンナ・ビリンスカ・ボーダノビッチ画
「Portrait of a Lady with Opera Glasses
(オペラグラスを持つ女性)」
1884年
ベルト・モリゾ画
「Before the Theatre(観劇の前)」1875年
オペラグラスも観劇の重要な小道具です。 背景が描かれていなくとも、オペラグラスを持っていれば、そこはオペラ座なのです。 |